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まずしきひとびとのむれ

貧しき人々の群

宮本 百合子

「中央公論」1916(大正5)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 59,959 字 · 118 页

青空文庫

而も直接自分自身が苦しめられている、疑いなのである。

彼等はただ貰いさえすれば好い、くれる分には、どんな物でもいやだとは云わない。

けれども、一枚着物を貰えば、前からの一枚はさっさと着崩して捨ててしまい、よけいな金が入れば下らない物――着ることもないような絹着物だの、靴だの帽子だのという彼等の贅沢品をせっせと買って、ふだん押えられている、金を出して物を買う面白さを充分に貪ってしまうのである。

それ故、五円あろうが十円あろうが、つまりは無いと同じことで、その金で買った物も、しばらくして困りきっては町へ売ってしまう。

金も、物品も、その流通する間をちょっと彼等の所へ止まるに過ぎない。

年中貧しくて、彼等にはただ、ああいう着物も買ったことがあったっけ、あれだけの金も持ったことがあったっけがという記憶だけが、それもぼんやりと遺るばかりなのである。

私はこのごろになって、ほんとに難かしいものだということをつくづく思っている。寛(ゆる)くすればつけ上る、厳しくすれば怖(お)じけて何を云っても返事もしないようになるのは、彼等の通癖である。

婦人連が彼等にめぐむことに若し成功したら? ほんとうに、彼等の生活の足しになることが出来たら? それはほんとうに結構なことである。