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まずしきひとびとのむれ

貧しき人々の群

宮本 百合子

「中央公論」1916(大正5)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 59,959 字 · 118 页

青空文庫

からは妙な同情を受けているのである。

今も私は「何でもない、自分が小さいからだけのことだ!」と諦めが着かない。

いかにも私は小っぽけな細い声を出して、何かゴトゴトいっているに過ぎない者ではあるけれども、もう直ぐの所に大変好いことがあるのに、またその好いことも捜し手を待ちかねているのに、見つけられないでいるのじゃあるまいかということがしきりに感じられる。ほんとに、ただ感じられているばかりなその一重向うの何ものかを求めようとして、私は目を見張ったり、手を動かしたり、ジーッと耳をすませたりしているのである。

かようなまた新しく湧き出した望みに攻められている間に、村はまた貧乏に戻る前の馬鹿らしい景気よさに賑わっていた。

村端れに酒屋が一軒ある。今まではさほど繁昌も出来なかったのが、このごろになってから急に客が殖えた。夕方になると野良から帰った百姓達の中心になって、一升と諢名(あだな)のある桶屋だの甚助親子だのが集って来た。

店先に床几(えんだい)を持ち出して、蚊燻(かいぶ)しをしながら唄ったり踊ったりの陽気さに、近所の女子供まで涼みがてらその囲りに立って見物をする。