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ひんみんくらぶ
貧民倶楽部
泉 鏡花
「北海道毎日新聞」1895(明治28)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,333 字 · 111 页
」車夫は仰天して立停まりぬ。「ああ危い。」と年増は溜息。
「どうも姉様難有う。」車夫は輪軸を検せんとて梶棒を下すを暗号に、おでん燗酒、茄小豆、大福餅の屋台店に、先刻より埋伏して待懸けたる、車夫、日雇取、立ン坊、七八人、礫のごとくばらりと出で、腕車の周囲を押取巻く。
「や、や、狼藉。」と驚きたまう老婦人の両の御手を左右より扼りて勿体無くも引下ろせば、一人は背後より抱竦め、他は塩ッ辛き手拭を口に捻込み猿轡。老婦人を載せたる車夫は不意の出来事に呆れて立ちしが、手籠に逢わるるを見るに忍びず、「やい此奴等、何をしやがるんでえ。」と客贔屓。
「若い衆! 大目に見ておくれ、この御客は私が買うよ。」
と年増は紙幣を取出して二三枚握らすれば、車夫はにわかに笑顔になり、「ちと、もし、御手伝を致しましょう。」現金な野郎なり。
「それ、これで。」と年増が解きて投与うる扱帯にて老婦人の眼をぐるぐる巻にし、仰向に突転ばして、「姉御、荷造が出来た。」といえば、
「引担げ。」「おっと合点。」
軽やかに肩に懸け、「ほい、水気が無えから素敵に軽い。」「まるで苧殻だ、」「お精霊様の、おむかえおむかえ。