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ひんみんくらぶ
貧民倶楽部
泉 鏡花
「北海道毎日新聞」1895(明治28)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,333 字 · 111 页
」「黒瀬ぬい。それがどうしましたえ。」と懸念げなり。
「夫人どう致しましょう、その婆様がね、家の松の木で首を釣ったの。」綾子も色を変じて、「ほんとうですか。」「今頃はどんなでしょう、私の来た時でさえ門の内は人で一杯。」と照子は後見らるる風情、そわそわして落着かず。
綾子はじっと俯向きしが、ややありて潜みたる顔を上げ、「照子様、内証ですよ、高い声では申されぬが、駿河台の御隠居様の急病というのは、まあまあ表向で、実は何か、鮫ヶ橋の方のものに間接にお殺されなすったようです。私共が願ってあすこへ行っておもらい申した、それから事が起ったそうで、申訳もありません、今の貴嬢の御談話といいどうも私の考えでは、鮫ヶ橋は容易ならぬ処です。いつかそれ慈善会を打毀した、あの恐しい女乞食も鮫ヶ橋の者ですよ。こう申せば何ですが、四ツ谷の空の一方には、妖い雲が立上って穏ならぬ兆候が見えて、今にも破裂しそうで、気に懸ってなりません。打棄っておいてはお互の身の上でしょう。私の思いますには、彼等の心の和ぐように折角恩を被せて、ねえ貴嬢。」と何やらん囁かれしが、小声にて聞取れず。照子が辞して帰りし後、深川夫人は腕車を命じ、所々方々奔走あり。