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ひんみんくらぶ

貧民倶楽部

泉 鏡花

「北海道毎日新聞」1895(明治28)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,333 字 · 111 页

青空文庫

流石は綾子、半日にて多数の貴婦人を一致せしめし。

その結果。

寺院は随一の華主なる豆府屋の担夫一人、夕巡回にまた例の商売をなさんとて、四ツ谷油揚坂なる宗福寺に来りけるが、数十輛の馬車、腕車、梶棒を連ね輪を駢べて、肥馬嘶き、道を擁し、馭者、馬丁、車夫の輩、手に手に桝を取りて控えたる境内には、一百有余の俵を積み、白米筵に山をなせり。

音楽妙に、読経の声清く、庫裡も本堂も人ならざる処無き意外の光景にひたと呆れぬ。

これ蓋し深川綾子の建案にて、麹町の姫様檀那となり、あまたの貴婦人これを扶け、大法会を修して縊死の老婆を追善し、併せて鮫ヶ橋の貧民の男女を論ぜず、老少を問わず、天窓数一人に白米一斗、無慮一百石を散ぜんとする未曾有の施行なりき。

「へい、真平御免なさい。少々どうぞ。」と豆府屋おずおず、群集を分けて入らんとすれば、比々として排べる車に支えて、台を担うて歩むべからず。膝の辺に手を下げて、「若い衆頼むよ、通してくんねえ。」車夫は傲然として、「べらんめえ、この混雑の中へ入れるもんか、眼を開けてものをいいなよ。顔を洗えさ。邪魔だ邪魔だ。」と推出しぬ。

豆府屋蹌踉して踏こたえ、「がみがみ謂うない、こっちあ商売だ。