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かしまをさがしたとき
貸間を探がしたとき
小川 未明
「中央公論」1923(大正12)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,776 字 · 6 页
「おあがんなさい」と、愛想気のない調子で、おなじ声が答えた。
私は、すべりのよくない障子を開けて、窮屈な土間から框へ上った。すると、奥に頑丈そうな白髪の老婆が、恐しい眼付をして、こちらをじっと睨んでいた。
「どの間ですか」
私は、もう聞かなくてもいいような気がしたが、やはり行きがかり上から言わなければならなかった。
「二階の六畳ですから、ごらんなさい」
婆さんは、起とうともしなかった。
私は、家へはいると、外で見たよりも、一層陰気を感じた。そして、急な狭い、暗い梯子段を上った。つきあたりの六畳を、これかと思って覗いた。壁は処々壊れていた。新聞紙などが古くから貼られている、色が黄色くなっていた。そして、畳の表は、すでに幾年前に換えられたのか分らなかった。襖でし切ってもう一間あるらしかった。
その室は、どんな室かと思って、私は、廊下つづきに並んでいるので、隣の間を覗いて見る気になった。高窓から、鈍い光線が射し込んでいた。私は、其処を覗くと同時に、苦しそうなうめき声が起った。蒲団を敷いて三畳の間に、女が枕を廊下の方にして、仰向になって臥ているのであった。もう長いこと臥ていると見えて、黒い髪の色は、つや気がなく縺れていた。