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かしまをさがしたとき
貸間を探がしたとき
小川 未明
「中央公論」1923(大正12)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,776 字 · 6 页
二
ほんとうに、そんなことが、この世の中にあるのだろうかと思った。
一、二年後であった。私は、其処を通ると二階家が見えなかった。垣根などが新しくなっていた。その家は、壊されたものと思われた。
二
私は、この世の中に「妖怪」の存在を否定する何ものも自から有しないかわりに、また、「妖怪」の存在を肯定するに足る程の実験にも触れて見ないのだ。けれど、「妖怪」以上の恐怖すべき光景に接することがないではなかった。
この一つも、やはり、学生時代に、貸間をさがした時に見た、光景の一つである。
関口の滝の附近に、黒く塗った壁板には、武者窓が附いている、古くからの家があった。しかし、それが外部から見ても陰気な二階建になっていた。一軒の前に「あきま」の紙札が貼られていた。
私は、こごんではいらなければならぬ、くぐり戸の外から、「ご免下さい」と案内を頼むと、「なにご用ですか」と、つんけんどんな、婆さんの声が内からした。そして、誰も出て来なかった。
私は、最初の印象が、すでによくないと思った。しかし、こちらから案内を頼んだ上は、仕方がなく、
「あきまを見たいのですが」と、言った。