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にせさつじけん
贋紙幣事件
甲賀 三郎
「少年倶楽部」1930(昭和5)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,495 字 · 17 页
お寺の門の外へ出ると、森君は又妙な事を云い出した。
「この辺に電灯会社の出張所はないかなあ」
暫くブラブラ歩いているうちに、十軒ばかり家が並んでいる所へ来た。その外れの一軒に電力会社工夫詰所と書いた札が出ていた。森君はその中にはいって行った。中には恐い顔をした工夫が二三人いたが、森君は平気だった。森君は全く勇敢だ。
「小父さん」森君はなれなれしく云った。「この近所に動力を使っている所がありますか」
「ああ、あるよ。この向うの精米所と、それからこっちの機織場と。妙な事を聞くね」工夫の一人は不審そうに森君を見た。金ボタンの制服を来た小さい中学生がだしぬけに変な質問をしたのだから、工夫の驚いたのは無理がない。
「有難う。その他にありませんか」
「その他には、この近所にはないね」
「この頃盗電はありませんか」
「あるよ。盗電があって困っているんだ」
工夫はびっくりしたように森君の顔を眺めながら答えた。
「どこで盗んでいるんだか分らないんですか」
「分らないので困っているんだよ。君はどうしてそんな事を訊くんだい」
「別にどうという事はないんです。どうも有難う。さようなら」
森君は又ペコンと頭を下げて外に出たが、珍らしく僕に話かけた。