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にせさつじけん

贋紙幣事件

甲賀 三郎

「少年倶楽部」1930(昭和5)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,495 字 · 17 页

青空文庫

「大人なんて、案外駄目なもんだなあ」

僕は何が駄目なのかよく分らなかったので黙っていた。

工夫詰所を出た森君は後戻りを始めた。すると、来る時には気がつかなかったが、一軒の小さい鍛冶屋があった。ブーブーと鞴でコークスの火を燃やして、その中で真赤にした鉄を鉄床の中に鋏で挟んで置いて、二人の男がトッテンカンと交る交る鉄鎚で叩いていた。叩く度にパッパッと火花が散った。

森君は鍛冶屋の前に行くと又ツカツカと中にはいった。

「お寺の和尚さんの頼んだものはいつ出来ますか」

「ネジ廻しかね」向う鎚を振上げた男は迂散そうな顔をして、森君を見ながら、「明日の朝出来ますだよ」

「有難う」

森君は鍛冶屋を出たが、ニコニコしていて何だか嬉しそうだった。

森君は先に立ってグングン歩いて行くので、僕はどこへ行く積りだろうと怪しみながらついて行くと、又先刻のお寺の門の所に来た。森君は平気でさっさと門を潜ってお寺の中へはいった。

「風岡君、僕はもう一ぺん縁の下に潜るから、あの変な坊さんが来ないか見ていて呉れ給え。もし来たら、来たッと云って呉れ給え。好いかい」

僕がもうそんな事は好し給えと止めようと思っているうちに、森君はもう縁の下に潜ってしまった。