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にせさつじけん

贋紙幣事件

甲賀 三郎

「少年倶楽部」1930(昭和5)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,495 字 · 17 页

青空文庫

之は」

巡査は吃驚したように云った。びっくりするのも無理がない、誰だって出し抜けに汚い瓶を目の前に出されたら、何が何だか分りゃしないもの。

「之はお寺の縁の下にあったのです。これは劇薬の塩酸の瓶です。これは――」

森君が云いかけると、坊さんは今まで真赤にしていた顔を、急に真蒼にして森君に飛びかかろうとしたが、直ぐに思い返して、ドンドン元来た方へ逃げようとした。

森君は大きな声で叫んだ。

「アッ、逃がしてはいけません。早く捕まえて下さい。あの坊さんが贋紙幣を造っているんですッ!」

交番の巡査は泡を喰って坊さんの後を追かけた。

三

「僕は始めには何にも知らなかったさ」

坊さんが捕まって、森君の云った通り贋紙幣を造っていた事を白状した時に、森君はちょっと得意になって云いました。

「僕は飛山君が気の毒だと思って、一ぺん飛山君の家へ行って、お父さんが貰って使おうとしたと云う贋紙幣はどこから来たのか、旨く行けば尋ね出したいと思ったんだよ。所が道で、ホラ、びっこを引いた犬がいたろう。脚の爪の間の蝨を取ってやる時に、ふと脚の裏を見ると赤味のかかった紫色のインキがついているじゃないか。