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にせさつじけん
贋紙幣事件
甲賀 三郎
「少年倶楽部」1930(昭和5)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,495 字 · 17 页
僕は感心して森君の顔を見た。全く森君はいろんな事を知っているのには敬服する。
お寺の縁の下は直ぐ調べられたが、森君の云った通り中ほどに大きな穴が掘ってあって、そこに精巧な印刷機械が据えつけてあった。印刷機械は電気で動くようになっていて、電気は勝手に線を引いて盗んでいた。大きなお堂の縁の下だし、廻りは広々と明いているし、お寺がすでに一軒ポツンと離れているのだから、少し位機械の音がしても聞えはしなかったのだ。それに誰だってお寺の坊さんと云えば尊敬しているのが常だから、そんな悪い事をしようとは思わなかったので、中々知れなかったのだ。
坊さんは縁の下の秘密が分ったので、すっかり白状してしまった。外にも四五人仲間があって、中には印刷の職工や画工や彫刻師があったが、みんな捕まってしまった。だんだん調べてみると、主謀者は他にあって、坊さんは無理に引込まれたのだと云う事だった。飛山君のお父さんは家が貧乏で、お寺からお金を借りたり、いろいろ世話になっていたので、今度も、坊さんから贋紙幣と知らないでお金を借りたのだったが、警察へ連れて行かれた時に恩になった坊さんの名を出すまいと、どんなに調べられても黙っていたのだった。