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にせさつじけん

贋紙幣事件

甲賀 三郎

「少年倶楽部」1930(昭和5)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,495 字 · 17 页

青空文庫

森君は小学校からずっと一緒で、とてもよく出来て、級長で通して来た、僕の大好きな友達だが、中学に来てもやっぱりよく出来て、臨時試験は皆満点だった。けれども中学となると、流石に方々の小学校からよく出来るものが集っているだけに、森君に負けないような人も二三人ある。飛山君はその一人で、臨時試験はやはり皆満点だった。それに真面目でおとなしいから、僕は直ぐ仲の好い友達になった。

今日は森君と相談して飛山君の田舎に遊びに来た。本当に淋しい道だ。家はチラホラあるけれども、しーんとしていて、人がいるのかいないのか分らない位、通る人にも滅多に会わない。東京の町とは大変な違いだ。

「ああ、可愛い犬が来たぜ」

森君はだしぬけに云った。森君は犬気違いだ。とても犬が好きで、犬とさえ見れば直ぐ呼んで可愛がる。妙なもので、犬の方でも可愛がって呉れる人は分ると見えて、時にはわんわん吠えて逃げて行くのもあるけれども、大抵の犬は尻尾を振りながら森君の傍に寄って来る。

森君は舌を鳴らしながらその犬を呼んだ。真白のおとなしそうな犬で、おどおどしながらも、嬉しそうにヒョコヒョコと森君の傍に寄って来た。