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にせさつじけん
贋紙幣事件
甲賀 三郎
「少年倶楽部」1930(昭和5)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,495 字 · 17 页
見ると、可哀相にびっこを引いている。森君も直ぐ気がついた。
「オヤ。びっこを引いているじゃないか。どうしたんだい。ちょっと脚をお見せ」
森君は往来にしゃがんで犬を抱えるようにして、びっこを引いている脚を持上げて、丁寧に調べた。
「やっぱり蝨がついているんだ。可哀そうに。脚の爪の間に蝨がつくと、自分では取れないからな。よしよし取ってやるぞ」
森君は犬の脚を高く上げて、爪の間に西瓜の種ほどの大きさに脹れている蒼黒い蝨をつまんで、力一杯引張って漸くの事で引離して、地面に投げつけると踏み潰した。その間犬は何をされているのか分っていると見えて、眼を細くしてじっとしていた。
「さあ、これでもうびっこを引かなくても好いぞ」
森君はそう云って、犬の脚を離そうとしたが、その時にオヤと云って首を捻った。見ると、脚の裏に何だか赤黒いものがベットリついている。
「血じゃないか。森君」
僕がびっくりして云うと、森君は首を振った。
「血じゃないよ。何かくっついているんだよ。変だなあ」
森君はポケットから紙を出して、犬の脚の裏をちょっとこすって見てから、脚を放した。犬は暫くクンクン云って尾を振りながら森君にジャレていたが、やがて一目散にどこかへ駆けて行った。