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にせさつじけん

贋紙幣事件

甲賀 三郎

「少年倶楽部」1930(昭和5)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,495 字 · 17 页

青空文庫

今時他人の迷惑になるのを恐れて、警察に留められても黙っているなんて珍らしい方ですよ」

「お母さん、贋紙幣ってどうして造るの」と訊いて見たら、お母さんはそんな事は知らないと云った。そうして紙幣と云っているけれども、あれは正しくは兌換券と云うもので、日本銀行と云う銀行が発行しているので、兌換券と云うのは、そこへ持って行けば金貨と兌換して呉れるからで、兌換と云うのは換える事だそうだ。あんな紙だけれども日本銀行へ持って行けばいつでも金貨と換えて呉れるから、それだけの値打があるので、贋紙幣だったら紙だけの値打しかないのだそうだ。だからそんなものを無闇に造って使われたら大変なので、重い罪にしてあるそうだ。この紙幣の発行は日本銀行だけれども、拵えるのは印刷局だそうだ。造幣局と云うのは、金貨や銀貨や銅貨を造る所だそうだ。紙幣は贋が中々出来ないように、紙から特別に拵えて、意匠やら模様やら色やら骨が折ってあるので、ちょっとした事では贋紙幣なんか出来るものではないそうだ。

飛山君の家を訊いたら女の子が逃げ出したので、森君と僕とは又歩き出した。すると向うの方から白い犬が尻尾を振りながら飛んで来た、見ると、先刻森君が脚の蝨を取ってやった犬だ。