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にせさつじけん

贋紙幣事件

甲賀 三郎

「少年倶楽部」1930(昭和5)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,495 字 · 17 页

青空文庫

その犬の他に二三匹仲間の犬がいてしきりに、ジャレ始めた。

森君は例の如く舌を鳴らして、他の犬をみんな呼び寄せたが、何と思ったか、一匹ずつ抱いては脚を上げて脚の裏を調べた。最後に一匹少し大きい茶の斑の強そうな犬は、わんわんと吠えて、中々傍へ来そうになかったが、森君は例の可愛い白い犬を囮にして、とうとう傍に来させて捕まえた。前脚をあげると、その犬にはベットリと例の赤黒いものがついていた。

森君が余り自由に犬を扱うので、面白くなったと見えて、さっきの女の子が又傍に寄って来た。森君は白い犬を指しながら訊いた。

「これ、どこの犬?」

「藤山さんとこんだ」

「これは」森君は茶の斑犬を指した。

「お寺んだ」

「お寺? どこにあるの」

「この先の大きな銀杏のあるお寺だあ」

森君は犬を放して起上った。

「風岡君。お寺へ行って見ようや」

二

僕達は大きな銀杏の木を目当にお寺に行った。白と茶斑の犬はジャレながらついて来た。

見上げるような大きい太い銀杏は墓場を仕切っている土塀の傍に突立っていた。土塀は大方崩れかかっていた。墓場から少し離れた所に本堂があった。本堂は可成大きくて、廻りがずっと空いていた。