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あかいふねのおきゃく

赤い船のお客

小川 未明

「童話」1924(大正13)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,624 字 · 8 页

青空文庫

ちょうど、このとき、奥深い寺の境内から、とぼとぼとおじいさんがつえをついて歩いて出てきました。

おじいさんは、白いひげをはやしていました。

二郎は、そのおじいさんを見ていますと、おじいさんは、二郎のわきへ近づいて、ゆき過ぎようとして二郎の頭をなでてくれました。

「いい子だな、独りでさびしいだろう。」と、おじいさんはいいました。

二郎は黙って、おじいさんの顔を見ていました。

おじいさんは、たもとの中から、短い笛を取り出しました。

「この笛を坊やにやるから、あちらの丘へいって吹いてごらん。これはいい音が出るよ。」といいました。

二郎はおじいさんから、その笛をもらいました。

おじいさんの顔は、いつも笑っているように柔和に見えました。

おじいさんは、あちらへつえをつきながらいってしまいました。

二郎はその笛を持って、あちらの砂山にゆきました。

このあたりは海岸で、丘には木というものがなかったのです。

砂の山が、うねうねとつづいていました。

そして、暖かな日なので、陽炎が立っていました。

沖の方を見ますと、青い青い海が笑っていました。

砂山の下には、波打ちぎわに岩があって、波のまにまにぬれて、日に光っていました。