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あかいふねのおきゃく
赤い船のお客
小川 未明
「童話」1924(大正13)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,624 字 · 8 页
ある、うららかな日のことでありました。
二郎は、友だちもなく、ひとり往来を歩いていました。
この道を、おりおり、いろいろなふうをした旅人が通ります。
彼はさも珍しそうに、それらの人たちを見送ったのであります。
二郎は、こうして街道を歩いてゆく知らぬ人を見るのが好きでした。
さまざまなことを空想したり、考えたりしていると、独りでいてもそんなにさびしいとは思わなかったからです。
暖かな風が、どこからともなく吹いてくると、乾いた白い往来の上には、ほこりが立ちました。
まだ、おそ咲きのさくらの花が、こんもりと、黒ずんだ森の間から見えるのも、いずれも、なつかしいやるせないような気持ちがしたのであります。
その日も、二郎は独りあてもなく、街道を歩いていました。
車の音が、あちらへ夢のように消えてゆきます。
薬売りかなぞのように、箱をふろしきで包んで負った男が、下を向いて過ぎていってからは、だれも通りませんでした。
二郎は、寺の前の小さな橋のわきに立って、浅い流れのきらきらと日の光に照らされて、かがやきながら流れているのを、ぼんやりとながめていました。
彼はほんとうに、このときはさびしいと思っていたのであります。