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あかいろうそくとにんぎょ

赤い蝋燭と人魚

小川 未明

「東京朝日新聞」1921(大正10)年2月16日~20日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,570 字 · 14 页

青空文庫

海の方から吹いて来る風が、松の梢に当って、昼も夜もごうごうと鳴っています。そして、毎晩のように、そのお宮にあがった蝋燭の火影がちらちらと揺めいていますのが、遠い海の上から望まれたのであります。

ある夜のことでありました。お婆さんはお爺さんに向って、

「私達がこうして、暮らしているのもみんな神様のお蔭だ。このお山にお宮がなかったら、蝋燭が売れない。私共は有がたいと思わなければなりません。そう思ったついでに、お山へ上ってお詣りをして来ます」と、言いました。

「ほんとうに、お前の言うとおりだ。私も毎日、神様を有がたいと心でお礼を申さない日はないが、つい用事にかまけて、たびたびお山へお詣りに行きもしない。いいところへ気が付きなされた。私の分もよくお礼を申して来ておくれ」と、お爺さんは答えました。

お婆さんは、とぼとぼと家を出かけました。月のいい晩で、昼間のように外は明るかったのであります。お宮へおまいりをして、お婆さんは山を降りて来ますと、石段の下に赤ん坊が泣いていました。

「可哀そうに捨児だが、誰がこんな処に捨てたのだろう。それにしても不思議なことは、おまいりの帰りに私の眼に止るというのは何かの縁だろう。