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あかいろうそくとにんぎょ
赤い蝋燭と人魚
小川 未明
「東京朝日新聞」1921(大正10)年2月16日~20日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,570 字 · 14 页
四
この話は遠くの村まで響きました。遠方の船乗りやまた、漁師は、神様にあがった絵を描いた蝋燭の燃えさしを手に入れたいものだというので、わざわざ遠い処をやって来ました。そして、蝋燭を買って、山に登り、お宮に参詣して、蝋燭に火をつけて捧げ、その燃えて短くなるのを待って、またそれを戴いて帰りました。だから、夜となく、昼となく、山の上のお宮には、蝋燭の火の絶えたことはありません。殊に、夜は美しく燈火の光が海の上からも望まれたのであります。
「ほんとうに有りがたい神様だ」と、いう評判は世間に立ちました。それで、急にこの山が名高くなりました。
神様の評判はこのように高くなりましたけれど、誰も、蝋燭に一心を籠めて絵を描いている娘のことを思う者はなかったのです。従ってその娘を可哀そうに思った人はなかったのであります。
娘は、疲れて、折々は月のいい夜に、窓から頭を出して、遠い、北の青い青い海を恋しがって涙ぐんで眺めていることもありました。
四
ある時、南の方の国から、香具師が入って来ました。何か北の国へ行って、珍らしいものを探して、それをば南の方の国へ持って行って金を儲けようというのであります。