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あかいかしゃ

赤い貨車

宮本 百合子

「改造」1928(昭和3)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,168 字 · 71 页

青空文庫

「わたし組合に入れましょうか」

「なぜいけない? まあ掛けなさい」

アンナ・リヴォーヴナの台所にあると同じ腰かけにナースチャは坐った。他の机の前では、さきに来た女が小さい帳面を出して、なにか計算してもらっていた。「お前さんは、いままでに二十二ルーブリ五十カペイキしか受けとっていないことになるね」「ええ」――「あまりがいくらあることになる?」女は二十六ルーブリ近くだと答えた。――「よく見といで、二十五ルーブリと五十カペイキだよ」好奇心と不安とをもってナースチャはその問答をきいた。

「デリ」と赤地に金文字つきの平ったい箱から巻タバコを出し、吸いつけながら、紺と黄色のネクタイの女が云った。

「さて、と……お前さんどこで働いている?」

「アンナ・リヴォーヴナのところです」

「番地は」

ナースチャのそばかすのある顔がだんだんひどく赤くなった。

「知りません」

「じゃいい。いままでいっぺんも、どこでも組合員だったことはない?」

「いいえ」

「そのアンナ・なんとかさんの家へ来るまで勤めていたかい」

「いいえ、はじめてです」

「いく日もう勤めた?」

「去年の八月からです」

「八、九、十、十一、十二、一、二――と。