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あかいへや
赤い部屋
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1925(大正14)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,114 字 · 36 页
玩具と見せた六連発の第二発目には実弾が装填してあったのだ。
私達は、長い間、ボンヤリそこに立ったまま、誰一人身動きするものもなかった。奇怪な物語りの後のこの出来事は、私達に余りにも烈しい衝動を与えたのだ。それは時計の目盛から云えば、ほんの僅かな時間だったかも知れない。けれども、少くともその時の私には、私達がそうして何もしないで立っている間が、非常に長い様に思われた。なぜならば、その咄嗟の場合に、苦悶している負傷者を前にして、私の頭には次の様な推理の働く余裕が十分あったのだから。
「意外な出来事に相違ない。併し、よく考えて見ると、これは最初からちゃんと、Tの今夜のプログラムに書いてあった事柄なのではあるまいか。彼は九十九人までは他人を殺したけれど、最後の百人目だけは自分自身の為に残して置いたのではないだろうか。そして、そういうことには最もふさわしいこの『赤い部屋』を、最後の死に場所に選んだのではあるまいか、これは、この男の奇怪極る性質を考え合せると、まんざら見当はずれの想像でもないのだ。そうだ。あの、ピストルを玩具だと信じさせて置いて、給仕女に発砲させた技巧などは、他の殺人の場合と共通の、彼独特のやり方ではないか。