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あかいらくだ
赤い駱駝
梅崎 春生
「世界」1948(昭和23)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,820 字 · 24 页
だからその姿勢は、どこか不自然な感じがする。あの反らした胸を支えているのは、二見の背骨ではなくて、あいつの張りつめた神経だったんだ。撫で肩の上に首を正しく保ち、唇を噛みしめるようにむすんで、眼をまっすぐむけて歩く。視線はまっすぐ前方をむいているが、いつも弱々しく怯えたような眼色だった。なにかを必死と守ろうとしているような。
たとえば二見の歩き方だ。これが特務士官やまた時には兵士たちの、憫笑のまとになっていたんだが、両足を前にふり出すようにして、勢いよくバタバタとあるく。まるで操り人形のように、両手を正しく振って、調子をつけたようにバタバタとすすんでゆく。二見の顔はしごく真面目で、綿密に配慮された努力感が、線のほそい感じの顔をどこか力ませているのだ。そして敬礼したり答礼したりするときは、足の踏み出しに合せて、右掌をひょいと顔にあげるのだが、紐で連結された操り人形にそっくりだ。うまくはずみがついている。それがひどく滑稽な感じなんだ。
こんなことがあるだろう。たとえばマネキン人形に、本物の毛を植えたり皮膚の色を本物らしくすればするほど、本物の人間の印象からますます離れてグロテスクになってゆくだろう。