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あかひげしんりょうたん

赤ひげ診療譚

山本 周五郎

05 徒労に賭ける

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,113 字 · 35 页

青空文庫

これを養生所のように板敷にすれば、床下からの湿気も防げるし、茣蓙はたやすく日光や風に当てることができる。これだけを比較してみただけでも、どっちが合理的かということは明瞭ではないか、と去定は云った。ちょうど坂を登りきって、本郷一丁目の通りを右へ折れるところだった。登は去定の説明を聞きながら、その理論の当否よりも、そういうところに眼をつけ、それを是と信じ、他の反対や不平に頓着せず、すぐに実行する彼の情熱と勇気に感嘆した。

――先生のような人こそ、養生所という特殊な施設にはうってつけの人なんだな。

こう思いながら、登は手拭で汗を拭いた。そのときひょっと、向うから来る一人の若者が眼についた。洗いざらしの単衣に三尺をしめ、藁草履をはき、片方の裾を捲って、ひょろひょろと来たが、すれちがいさまにどんと去定に突き当った。うしろにいた登の眼にも、明らかにわざと突き当ったということはわかった。不意をつかれて、去定はちょっとよろめき、すると若者が喚いた。

「やい老いぼれ、どういうつもりだ」

去定は相手を見、すぐに目礼して云った、「これはどうも、失礼した」

「失礼したあ」