轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
あかひげしんりょうたん
赤ひげ診療譚
山本 周五郎
08 氷の下の芽
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,146 字 · 40 页
登は黙って机の前に坐った。
「ではこれで」と津川が立ちあがった、「私の役は済んだようですから失礼します、よろしいでしょうか、若先生」
登は眼も向けず黙ってい、津川玄三は出ていった。おかねはひどく酔っているようすで、坐り直そうとすると、膝が割れ、水浅黄の下の物があらわになった。
「あのばか娘のことはどうきまったんですか」とおかねが云った、「論のあることじゃあない、おろして下さるんでしょうね」
「娘は産みたいと云っている」
「ばかばかしい」おかねは蜘蛛の巣でも払いのけるような手まねをした、「養生所の先生ともある人が、あんなばか者の云うことをまに受ける筈はないでしょ、手っ取り早く片をつけて下さい、こっちはそこらのお大尽と違って、そう暢気なまねはしちゃあいられないんですから」
「それは諦めたほうがいい」と登は怒りを抑えて云った、「娘は子を産むと云っているし、私たちも産ませるつもりだ、あの娘をくいものにすることは諦めるほうがいい」
云ってしまってから、言葉が過ぎた、と登は思った。おかねは屹となった。酔いのためにたるんでいた顔が、まるで紐でも緊めたように硬ばり、いっそう醜く歪んで、いまにも噛みつきそうな表情になった。