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あかひげしんりょうたん

赤ひげ診療譚

山本 周五郎

01 狂女の話

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,384 字 · 41 页

青空文庫

登は赤髯の着ていたものを思いだし、森半太夫も同じ着物を着ていた、ということを思いだした。訊いてみると、医員は夏冬ともぜんぶ同じ色の同じ仕立であるし、病棟の患者は白の筒袖にきまっている。それは男女とも共通で、子供の着物のように付紐が付いており、付紐を解けばすぐ診察ができるように考えられたものだという。だが患者たちはそれを好まない、床板に薄縁という部屋の造りと共に、どうしても牢屋の仕着のような感じがする、という不平が絶えないそうであった。

「昔からの規則ですか」

「赤髯どのの御改革です」津川は肩をゆすった、「彼はここの独裁者でしてね、治療に関しては熱心でもあるしいい腕を持っています、大名諸侯や富豪のあいだにも、ひじょうな信頼者が少なくないんですが、ここではあまりに独断と専横が過ぎるので、だいぶみんなから嫌われているようです」

「火鉢なども使わないとみえますね」

「病棟のほかはね」と津川が云った、「江戸の寒さくらいは、却って健康のためにいいんだそうです、それに、病棟以外に炭を使うような予算もないそうでしてね、――ちょっとひと廻りしてみましょう」

二人は部屋を出た。