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あかひげしんりょうたん
赤ひげ診療譚
山本 周五郎
01 狂女の話
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,384 字 · 41 页
七
七
登は瓠の口からその酒を飲んだ。それはこっくりと濃くて、ほのかに甘く、そして薬の匂いがした。まだ津川がいたときに、五平のところへいって味わったことがある。湯呑に一杯だけであったが、あまりに濃厚な味で、それ以上は飲めなかった。いまは酔っているのと、酒とは変った舌ざわりのためだろう、このまえよりも美味く感じられて、お杉の話を聞きながら、知らぬまにかなり飲んだ。
彼女はおゆみの話をしたのだ。
「本当のことをいうと、去定先生のみたても違うと思うんです、お嬢さんは気違いなんかではありません、それはあたしがよく知っています」とお杉は云った、「あなたはまじめに聞いて下さるんでしょうね」
「正直に、すっかり話すならね」と彼は云った、「だが今夜でなくってもいいぜ」
「酔っていらっしゃるからね」
「その声では辛かろうというんだ」
「あたしは平気です、却ってこのほうが他人の声のようで話しいいくらいよ」と云ってお杉はまた念を押した、「本当にまじめに聞いて下さいましね」
登は片手を伸ばしてお杉の手を握った。お杉は手を預けたままで話した。
お杉が奉公にあがったとき、おゆみは二つ年上の十五歳であった。