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あかさかじょうのからくり

赤坂城の謀略

国枝 史郎

「日の出」1935(昭和10)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,661 字 · 16 页

青空文庫

(穴の中の死骸の焼けたのを見て、正成自害したと思うであろうよ)

二

一里あまりも落ちのびた時、行手に数人の人影が見え、

「多門兵衛か」

と声がかかった。

「これは宮様にござりまするか」

然う、そこにお立ちになられたは、いつか山伏風に身をやつされ、その上を蓑笠で蔽いあそばされた、大塔宮護良親王様と、同じ姿の七人の家来、村上彦四郎義光や、平賀三郎や片岡八郎等であった。

「御武運ひらきますでござります」

云い云い正成は守袋を取り出し、敵に射かけられた矢が身にあたらず、これにあたったことをお物語りした。

「神仏は神仏を信ずる者にのみ、そのあらたかの加護を与うるものじゃ。……人君に忠節を尽くす者は、その全き同じ至誠を以て、神仏を信じ崇めるものじゃ」と、親王様には厳かに仰せられた。「正成、そちに神仏の加護ある、当然至極のことと思うぞ」

深い感動が人々の心に、一瞬間産まれ出た。

四辺の木立を揺がすものは、なお止まない雨と風とであり、闇夜を赤く染めているものは、燃えている赤坂城の火の光であった。

その火の光を眺めては、さすがに正成の心中にも、感慨が湧かざるを得なかった。