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せきようかんじけんのしんそう
赤耀館事件の真相
海野 十三
「新青年」博文館、1929(昭和4)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,797 字 · 60 页
それが黒猫の瞳ででもあるかのように気味のわるい明るさを持っていました。
一同は雪崩を打って実験室の中へ飛び込んだものですから、またたく間に室の中は泥足で蹂躙せられてしまいました。兄は、自記式の気温計や、気圧計や、湿度計がかけてある壁の際に、うつぶせになって仆れていました。勝見と賀茂子爵とが兄の身体を卓子の上に移しました。そのとき卓子の上に、コップが一つ置かれていましたが、その底には僅かにレモナーデの液体が残っていたそうです。嫂は物も得言わず、ただうちふるえて兄の身体をゆすぶっていましたが、百合子が「姉さん、しっかりして頂戴」と後から囁きますと、そのままとうとう百合子の腕の中に気を失ってしまいました。それで騒ぎは益々大きくなって行ったのです。一座の中には、医学博士やドクトルも居たので、両人には割合に手早く手当が加えられました。嫂は、まもなく蘇生して、元の身体に回復しましたが、兄の方は遂に息を吹きかえしませんでした。その死因は、たしかなこととて判らないのですが、心臓麻痺らしいという見立てでありました。死因に疑いを挟んだ医学者も居たのでしょうが、その場のことですから口を緘して語らなかったのでしょう。