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ちょうかきんむ
超過勤務
山本 周五郎
「文藝朝日」朝日新聞社、1962(昭和37)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,619 字 · 31 页
部屋である。左と右に出入りのドア。彼がはいって来たのは右側のドアだから、いましがた二人の男女が出ていったのは左側のドアであろう。他の二方はコンクリートの壁で、いまデスクに向かっている彼のうしろの壁の上部に、金網張りの通気口が二つあるほか、窓らしいものがないのは、ここが地下室であることを示していた。――部屋の中でいちばん眼につくのは、彼の掛けている大きなデスクであるが、それは彼のものではない。彼のデスクは通気口のある壁際にあり、電話が二つと、書類入れや帳簿やインク・スタンド、ペン皿などが、きちんと整頓してあった。右側のドアの脇にも、テーブルと椅子があり、たぶん女事務員の専用であろう、しなびたカーネーションを※(「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28)した緑色ガラスの一輪※(「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28)と、小さな立て鏡と、鏡の下にちびたルージュが転がっていた。
このほかにはガラス戸のある大きな書棚が三つ、スチール製の防火キャビネットが二つ、二た組のテーブルと椅子などのあいだに、麻紐で束ねた