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あし

足

豊島 与志雄

「新小説」1925(大正14)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,967 字 · 8 页

青空文庫

よく見ると、死人の足でもなさそうだった。

寝呆けてるんだな。

そう思ったとたんに、足が寝呆けてると口の中でくり返して、私は一人で可笑しくなった。

が不思議な足だった……というよりも、初めてつくづくと眺めたので、不思議だったのかもしれない。

浅黒い男の右の足だったが、見れば見るほど変な恰好に思われてきた。向う脛の骨が張子の骨のように際立って見える、痩せた細長いやつで、黒い毛が一本一本粗らになって生えていた。それが次第に、骨と皮ばかりに細っていってる先に、踝の骨が腫物のように高まって、そこから、がくりと斜めに折れ曲って、馬鹿に大きな足先きとなっていた。太い針金のような筋が甲に五本分れ出て、細長い先の円い指を吊していた。その指が少し上向き加減にうち開いて、守宮の足の指のように見えた。それが、その全体が、ゆらゆら……ゆらゆら……何かを招いているようだった。

寝呆けやがって……化けるな、化けるな。

ビールの酔も手助って、私はそんなことを腹の中でくり返しながら、そっと足先を通りぬけた。

然し、愈々寝る段になると、足のぶら下ってる下にもぐりこむのは、どうも我慢がならなかった。