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のうそん
農村
宮本 百合子
「多喜二と百合子 七号~十三号」多喜二・百合子研究会、1954(昭和29)年12月~1955(昭和30)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,223 字 · 97 页
私はその小作人の家のすぐの処で草を刈って居る婆さんとその裏にぴったりよった処にある木の根っ子に腰を下して、膝の上に頬杖を突いて秋の初めの太陽の光に鋭く反射する鎌の先をながめながら下らない話をして居る。婆さんは此処の貧亡な事をしみじみ同情する様な口調で話してきかせた。
話をきいて私はつと家の中を見たい気になり、木の根っこから乗り出して裏口から半身を家の中へ入れる様にして中の様子を見ようとした。
三尺位の入口は往来に面し裏口は今私の居る、今は何も作ってない畑地に向って居る。
この二つの入口だけであと天窓ほかない此家の内部は屋外からのぞいた明るい眼では、なかなか見られないほど暗く陰気である。
野菜の「すえ」た臭いと、屋根の梁の鶏の巣から来る臭いが入りまじって気味悪く鼻をつく。
暗さになれてよく見ると、五坪ばかりの土間の一隅には朽ちた「流し」と形ばかりの「かまど」がある。
そのわきにじかに置いた水桶のまわりは絶えて乾くと云う事はないらしくしめって不健康な土の香りとかびくささがいかにもじじむさい。
馬鈴薯と小麦、米などの少しばかりの俵は反対のすみにつみかさねられて赤くなった鍬だの鎌が、ぼろぼろになった笠と一緒にその上にのっかって居る。