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のうそん

農村

宮本 百合子

「多喜二と百合子 七号~十三号」多喜二・百合子研究会、1954(昭和29)年12月~1955(昭和30)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,223 字 · 97 页

青空文庫

こうして餅をつき一日がわりに家々をたべて歩いてなど居るのである。こんなに寒くて居ながら食物は非常に粗末で餅等は上等の食料である。この村で一番食物に困るのは云わずと知れた冬である。私は、寒さよりも、食物よりも、その淋しさに堪えられない程である。このまんまズーッと地の中に沈んで行って仕舞いそうな気持のする地面の様子や枯坊主になってヒーヒー云って居る木々の様子は、こんな処になれない私をよほどつよく刺激する。私は毎日こもって火のそばをはなれず着ぶくれて身動きもならない様にして居るのである。

この寒さの最中、満期になって帰って来た高橋の家の息子は帰るとすぐ家へ来た。面長の、眼の大きい、すんなりした顔立の男だけれ共、少し気の遠い処が有りそうな口元をして居る。色なんかちっとも白い事はない。額の生際の方が少し顔の下の方よりは白っぽい。まだいかにも兵隊帰りの様子をして居て歩くのでも、口の利きかたでも「…………終り」と云いたげな風である。

「そうであります。

と云うのがいやに耳ざわりに聞えた。辛かった事、面白かった事を細々かぞえたてて話したのが祖母には耳珍らしくてよかったらしい。