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のうそん
農村
宮本 百合子
「多喜二と百合子 七号~十三号」多喜二・百合子研究会、1954(昭和29)年12月~1955(昭和30)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,223 字 · 97 页
冬の最中に、銃の手入をするのが一番つらかったと云った、赤切れから血がながれて一生懸命に掃除をする銃身を片はじから汚して行く時の哀なさと云うものはない。銃を持って居る手がしびれ、靴の中の足がこごえて、地面のでこぼこにぶつかってころんだり銃を落したりする。
祖母は涙ぐんできいて居た。来る人も少ないので祖母は長い事引きとめ、いろいろ食べさせたり、飲ませたりして、反物をお祝だと云ってやった。涙を襦袢の袖で拭きながら、
「お前もまあこれで一人前の男になったと云うものだ。これからは嫁さんさがしにせわしい事だねえ。
と云うと男は、
「何そんな…………
と云って座りなおした。祖母は自分の身内のものの様な、頼しい様な気がして居るのだろうなどと思って私は見て居る。学校仲間、在郷軍人、親類などから祝によばれたり呼んだりするので母親はせわしがってるとうれしそうに云って行った。
高橋の息子が帰った頃から又寒さがました様で、段々空気は荒く、風の吹き様もなみではなくなって来た。祖母は、吹雪の時の用心に屋根瓦を見させたり、そこいらの納屋の壁や、野菜を入れて置く穴倉に手を入れさせた。毎朝来るトタン屋は、風呂場の樋だの屋根だのの手入をして居る。