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のうそん
農村
宮本 百合子
「多喜二と百合子 七号~十三号」多喜二・百合子研究会、1954(昭和29)年12月~1955(昭和30)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,223 字 · 97 页
父がまだ若い時から居た爺なので、私の事をまるで、孫でも見る様な気で居る。顔中、「たて」の大波をよせて歯ぐきを出して、私の様子を見て居る。
「東京さ、告げであげますだ。さ、来なされ、そらころぶころぶ。
爺は、その大きな、私の頭なんかは一つかみらしい変に太くて曲った指のある手で私の手をひっぱり、三つ子を歩かせる様に私を家へつれ込んだ。
この様子を見ると先ず笑ったのは女中で、怒りもならない顔をして祖母は、
「まあ何て事だえ、甚五郎が来なかったらどうする。
と云いながら、私に奇麗な足袋を出して呉れた。祖母は、
「鎌足らず公だから、三河屋の呉れた餅を三ケ一ほどお汁の中へ入れておやり」と云う。甚五郎は炉で煙草を吸って居る。
鯛の眼の通りな水色の眼玉は、たるんだ瞼をながれ出しそうになって居て、「たて」や「横」の「しわ」が深い谷間を作って走って居る。大抵は頽げた頭の後の方に、黄茶色の細い毛が少しばかり並んで居る。
歯のない口をしっかり結んで「へ」の字形にして居るので何だかべそを掻てる様に見える。耳のわれそうな声で話すが、自分は非常に耳が遠い。十近く年上の祖母から「耳が遠いよ」