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のうそん
農村
宮本 百合子
「多喜二と百合子 七号~十三号」多喜二・百合子研究会、1954(昭和29)年12月~1955(昭和30)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,223 字 · 97 页
と云われるほどである。随分長い間、今小学校の校長の居る処に住んで居て、畑や米の世話をして居たが、気の勝った年寄の召使と主人とは、しばしば衝突が起って、しばらく東京の家の方へ来て居た事もあったけれ共、今は、隣村とこの村の境のどっちともつかない様な処へ息子からの「あてがいぶち」で暮して居る。少なからず抜けては居るが、この爺をこの上なく大切がって居る女房は、百姓共の小供の着物等を縫ってやって僅かの口銭を取って居る。
長い事、煙草をふかして居た甚五郎は「やっこらさ」と立ちあがって、祖母の居る茶の間の入口に小山の様に大きく膝をついて拳固にした両手の間に頽げて寒そうな頭を落す。
「とうとう降りやしたない。寒い事寒い事。
と目を細くする。そして私の方を見て、笑いながら、さっきの私の様子を細々と祖母に説明してきかせるのである。お汁の中の餅をありったけ食べつくしてから甚五郎は水口から井戸までの細道をつけ一通りぐるりを見廻ってから、手拭をもらって帰った。
それから後、引きつづき引きつづき有象無象が「悪いお天気でやんすない、お見舞に上りやしただ。
と云って来た。その中の或る者は、水を四肩(二つの手桶を天秤棒にかけたのを一肩と云う)も汲んで行ったり、これから四五日の薪をすっかりこしらえて行ったのもあった。