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きんせいかいじんでん

近世快人伝

夢野 久作

「新青年」1935(昭和10)年4月号~10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 79,469 字 · 157 页

青空文庫

である。

喜平氏は親友湊屋仁三郎の使者として同業の水野が、白足袋などを穿いて改まって来たので、何事か知らんと思って座敷に上げた。ちょうど時分がよかったので午餐まで出して一本燗けた。

水野は遠慮なく厄介になりながら熱心に説去り説来ったが、聞き終った青柳喜平氏は米搗杵みたいな巨大な腕を胸の上に組んだ。

「ウムウム。成る程成る程。よう解かった。如何にも貴様の云う通り人間は老少不定。いつ死ぬるかわからん。俺の親父も中気で死んどる故、血統を引いた俺も中気でポックリ死なんとは限らん。実はこの頃、肥り過ぎて子供相手に柔術が取れんので困っとる。技術に乗ってやれんでのう」

「ウン。それじゃけに今の中に保険に入れと……」

「まあ待て待て。それは良う解かっとる。這入らんとは云わん」

「有難い。流石は青柳……」

「チョチョチョッと待て……周章るな。そこでタッタ一つ解らん事がある」

「何が解らんかい。これ位わかり易い話はなかろう」

「さあ。それが解からんテヤ。つまりその俺がポックリ死んだなら、取れた保険の金は貴様達二人が貰われるように、証文をば書いておけと云いよるのじゃろう」

「その通りその通り。