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とうめいねこ

透明猫

海野 十三

「少年読物」1948(昭和23)年6月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 10,223 字 · 21 页

青空文庫

そうでもあろう。いきなり目玉へ指をつっこまれたのでは、びっくりする。

青二の手がひりひり痛んだ。見ると、血が出ている。今動物のために、ひっかかれたんだ。

が、このとき青二は、おどろきのあまり、心臓がどきんと大きくうってとまった。それは、なんだか自分の手が、はっきり見えないのだった。ぼんやりとしか見えないのだった。

「どうしたんだろう」さっき青二の母親がいったことばが思い出された。「青二、どうしたの。お前の顔は、かげがうすいよ」と、いわれたのを。

青二は柱にかかっている鏡の前へいって顔をうつしてみた。

「おゃっ」

大きなおどろきにぶっつかった。鏡にうつった青二の顔は、うすぼんやりしていた。校服はちゃんとはっきりしているのに、くびから上が、ぼんやりしているのだった。

やっぱり自分も、のぼせ目となったのかと思い、青二は、いくども目をこすって、鏡の中にうつる自分の顔を見なおした。

だが、そのかいは、なかった。いくど見なおしても、彼の顔はぼんやりしていたし、両手をうつしてみても、やはりそれもはっきりうつらなかった。

「えらいことになった」と、青二はその場にうずくまってなげき悲しんだ。