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じんるいのせいぞんきょうそう
進化と人生(上)
丘 浅次郎
丘浅次郎『進化と人生(上)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:人類の生存競争、教育と迷信、誤解せられたる生物学、人道の正体、生物学的の見方、生物学より見たる教育、戦争と平和、動物界における善と悪、脳髄の進化、民族の発展と理科、理想的団体生活。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 82,343 字 · 164 页
されば団体の要求もその時々に変じ、これを標準とした善悪なる語も時によって相異なり、同一の行為でも昨日善と言われたものが今日は悪となることもあるべきはずである。一例をあげて見るに甲乙二団体が相敵視している間は、甲団体の猿が乙団体の猿を殺すことは敵の戦闘力を減ずるとの理由で善なりとほめられ、最も多く殺した猿ほど偉勲赫赫などと激賞せられるが、さらに丙なる大団体の攻撃に遇うて甲乙相同盟したときには、甲団体の猿が乙団体の猿を殺すことは、自己の同盟軍の戦闘力を減じて敵を利するにあたるゆえ、悪として罰せられるのである。その行為は全く同一でもその事情によって善とも言われ、悪とも言われる標準の違うことはこれを見ても明らかであろう。
共同の敵にあたるためには団体は同盟し、同盟すれば強くなって敵を倒すこともできる。敵が倒れれば同盟は破れ、同盟が破れればみな互いに敵である。動物の団体はこの順序に従うてつねに変遷するものゆえ、善悪の標準ももとよりこれとともに変ぜざるを得ない。かくのごとくであるゆえ、団体生活から離して単にある行為のみを取って、善とか悪とか評することはとうてい無意味のことで、団体生活と関連してある行為を評する場合にも、評者自身がその団体内の一員としての資格で論ずるときにのみ善悪の批評ができるのである。