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じんるいのせいぞんきょうそう

進化と人生(上)

丘 浅次郎

丘浅次郎『進化と人生(上)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:人類の生存競争、教育と迷信、誤解せられたる生物学、人道の正体、生物学的の見方、生物学より見たる教育、戦争と平和、動物界における善と悪、脳髄の進化、民族の発展と理科、理想的団体生活。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 82,343 字 · 164 页

青空文庫

また個体の集まって成れる団体と団体との間の行為について言えば、これはあたかも単独生活をなす動物個体の行為と同様で、まさった者が勝ち、劣った者が負け、強ければ栄え弱ければ亡びること、あたかも水が流れ火が燃えると同然で、善とも悪とも名づくべき限りではない。動物界において、個体の行為を善悪に分けて批評することのできるのは、団体生活をなす動物の中で、団体の意志と個体の欲情との相矛盾する場合だけであるが、かかる場合は猿などのごとくに、個体はおのおの自分の欲情を遂げんと欲しながら、敵に対して身を護る方便として、欲情の一部を制して、ようやく社会を組み立てている動物において見いだすを得るものである。

生物学の一分科として動物の習性を研究する学科を生態学(Ethologia)と名づけるが、その語原は倫理学(Ethica)と同じく、ともにギリシア語の「習慣」という字からきている。かくのごとくこの二学科は元来同様の性質のもので、その間にはきわめて深い関係のあるべきはずなることは名前の上に現われているにかかわらず、倫理学者は今日まで動物生態学を度外してもっぱら抽象的の議論のみをたたかわしていたのであるが、われらの考えるところによれば、倫理学の根柢はぜひともこれを生態学に求めなければならぬ。