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とんそう
遁走
葛西 善蔵
「新小説」1918(大正7)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,581 字 · 23 页
「君は何か芸術家というものを、何か特種な、経済なんてものの支配を超越した特別な世界のもののように考えているのかもしれないが、みたまえ! そんな愚かな考えの者は、覿面に世の中から手ひどいしっぺ返しを喰うに極っているから」
「いや僕もけっしてその、経済関係を無視するとかそんな大それた気持からではないのだがね、またそれを無視するほどの元気な気持であれば、きっと僕にも何かできるだろうがね、何しろ今度はまったくどうしようもなかったのだよ」
「どうしようもないからどうしようもないと言って、すましていられるところが、君の太いところだよ。そこへ行くと原口はとにかく彼の意志を表明したさ……書いたからね。彼もおそらく君以上にぽしゃっているだろう。要するに根本は経済問題からさ。しかしとにかく彼は書いて、それを持歩いているが、金が間に合わないから、明日の僕の会へも出席しないと言ってるじゃないか。ところが君はそうじゃない。一文も僕に返せないでも、三円という会費を調達して出席しようというのだ。君にそれだけの能力があるのなら、なぜ僕にそれだけでも返して、出席の方は断わるという気持になれないのかね? これはけっしてたんなる金銭の問題でないのだよ。