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うんめいろんしゃ
運命論者
国木田 独歩
「山比古 第十號」1903(明治36)年3月5日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,357 字 · 34 页
それは気味が悪いでしょうよ。私は怨霊の児ですもの。』と言い放ちました、見る/\母の顔色は変り、物をも言わず部屋の外へ駈け出て了いました。
僕は其まゝ母の居間に寝て了ったのです。眼が覚めるや酒の酔も醒め、頭の上には里子が心配そうに僕の顔を見て坐て居ました。母は直ぐ鎌倉に引返したのでした。
其後僕と母とは会わないのです。僕は母に交って此方に来て、母は今、横浜の宅に居ますが、里子は両方を交る/″\介抱して、二人の不幸をば一人で正直に解釈し、たゞ/\怨霊の業とのみ信じて、二人の胸の中の真の苦悩を全然知らないのです。
僕は酒を飲むことを里子からも医師からも禁じられて居ます。けれども如何でしょう。此のような目に遇って居る僕がブランデイの隠飲みをやるのは、果て無理でしょうか。
今や僕の力は全く悪運の鬼に挫がれて了いました。自殺の力もなく、自滅を待つほどの意久地のないものと成り果て居るのです。
如何でしょう、以上ザッと話しました僕の今日までの生涯の経過を考がえて見て、僕の心持になって貰いたいものです。これが唯だ源因結果の理法に過ないと数学の式に対するような冷かな心持で居られるものでしょうか。