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ひとつのやくそく

道化の精神

太宰 治

遇难者为了不打扰灯塔守护人的温馨晚餐,放弃呼救被浪卷走。没人看见的“美”真的存在吗?太宰治用幻想故事探讨小丑的精神。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,048 字 · 5 页

青空文庫

一つの約束

難破して、わが身は怒濤に巻き込まれ、海岸にたたきつけられ、必死にしがみついた所は、燈台の窓縁である。やれ、嬉しや、たすけを求めて叫ぼうとして、窓の内を見ると、今しも燈台守の夫婦とその幼き女児とが、つつましくも仕合せな夕食の最中である。ああ、いけねえ、と思った。おれの凄惨な一声で、この団欒が滅茶々々になるのだ、と思ったら喉まで出かかった「助けて!」の声がほんの一瞬戸惑った。ほんの一瞬である。たちまち、ざぶりと大波が押し寄せ、その内気な遭難者のからだを一呑みにして、沖遠く拉し去った。

もはや、たすかる道理は無い。

この遭難者の美しい行為を、一体、誰が見ていたのだろう。誰も見てやしない。燈台守は何も知らずに一家団欒の食事を続けていたに違いないし、遭難者は怒濤にもまれて(或いは吹雪の夜であったかも知れぬ)ひとりで死んでいったのだ。月も星も、それを見ていなかった。しかも、その美しい行為は厳然たる事実として、語られている。

言いかえれば、これは作者の一夜の幻想に端を発しているのである。

けれども、その美談は決して嘘ではない。たしかに、そのような事実が、この世に在ったのである。