轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

みちづれ

道連

豊島 与志雄

「中央公論」1924(大正13)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,366 字 · 37 页

青空文庫

然しその時僕はそんなことは考えもしなかった。秋の夜の山道で若い女から追い越された、その一寸名状し難い感情で一杯になっていた。何だかやけくそのような気持で立上って、足早に歩き出した。

五六町も行ったかと思う頃、その女が道端の岩角に腰掛けていた。ぼーっとした提灯の火を側にして、月の光を斜め半身に受けて、顔を外向けているその様子が、もうずっと前から其処に坐り通してるような風だった。僕は何だか息がつけず石のように固くなって、ちらと見やったまま通り過ぎた。彼女は見向もしなかったらしい。

それから暫く行くうちに、全く意外な気持が僕に湧いて来た。こんどは僕の方が一休みして彼女を待っていてやらなければならない……なぜそうだかは分らないが、兎に角待っていてやるのが当然だ、という気持だった。まあ彼女に強く心が惹かれたのだ。が誤解しちゃいけない。彼女にどうのこうのって、そんな普通の意味でじゃなくって、全く字義通りの意味で心を惹かれたのだ。第一僕は彼女の顔だって一度も見なかったし、その様子で若い女だと感じただけのことじゃないか。

で、その気持が次第に強くなってきて、やがて僕は月の光のさしてる岩角に腰掛けて待ち受けた。