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せんきょさつじんじけん

選挙殺人事件

坂口 安吾

「小説新潮 第七巻第八号」1953(昭和28)年6月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,782 字 · 28 页

青空文庫

三高のトラックは花見の中を遠慮深く通りすぎて止った。すると三高は候補者のタスキをはずし、運動員にかこまれて、花見の人群れへ戻ってきた。そして彼らも花の下で一パイやりはじめたのである。

「候補者の花見なんて聞いたことがねえや。いよいよ変だぜ、この先生は」

寒吉もつくづく呆れた。寒吉も弁当はブラさげてきたが、一升ビンの用意はない。当り前だ。仕事のつもりだもの。ところが三高先生の一行はチャンと何本かの一升ビンの用意もととのえてきている。先廻りのサクラもこの地に配しておいたほどだから、ここで飲むために予定してきた一升ビンに相違ない。

「予定はキチンとしているらしいな。すると、もっと手のこんだ予定ができてるかも知れないぞ。いよいよ面白くなってきた」

このお忍びの酒もりへ、さらにお忍びの誰かが合流するだろうと寒吉は考えた。

ところが、やがて合流したのは、例の人相のわるいサクラだけだ。そして間もなく一同酔っ払ってしまったらしい。仲間同士でケンカをはじめたのだ。

寒吉はわざと離れて、顔を見せないようにして監視していたから、ケンカの原因は分らない。いきなり殴り合いが起っていた。