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せんきょさつじんじけん
選挙殺人事件
「小説新潮 第七巻第八号」1953(昭和28)年6月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,782 字 · 28 页
お宅だって、百万や二百万は使ったでしょう」
さすが違反を怖れてか返事をしないのは上出来であった。
「別に貸した物が欲しいわけじゃありませんが、一度御主人にお目にかからせて頂くかな」
「そうなさいな。人のしたことでも、カカリアイのあることならキチンとしてくれる人ですよ」
わざと三四日の間をおいて、寒吉は夕食後和服姿にくつろいで三高を訪問した。
三高は彼を見るなり、「江村があなたから何か借りッ放しだそうですが」
「イエ、それはもういいんです。それどころか、あなたこそ大変な被害をなさったそうですね」
「イヤ。これも選挙費用のうちですよ。そう思えば、問題はありません。もう選挙のことは思いだすのもイヤです」
夫人がそれをひきとって、
「四五日前に、選挙に使ったもの、みんな燃しちゃったんですよ。店の若い人達もモシャクシャしてるものですから、あれもこれも燃しちゃえで大騒ぎでしたよ。選挙事務所で使ったイステーブルまで景気よく燃しちゃったんです。ここの家じゃア有り余る物ですから燃しちゃっても平気のせいもありますけどさ」
寒吉はハッとした。犯罪の跡を消すには煙にするに限ることは云うまでもない。