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じゃしゅうもん

邪宗門

芥川 竜之介

「東京日日新聞」1918(大正7)年10~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,184 字 · 79 页

青空文庫

――

この容子を見た私どもは、云わず語らず両方から沙門の小屋を取囲んで、そっと太刀の鞘を払いました。が、私は初めからどうも妙な気おくれが致していたからでございましょう。その拍子に手もとが狂って、思わず鋭い鍔音を響かせてしまったのではございませんか。すると私が心の中で、はっと思う暇さえなく、今まで息もしなかった菰だれの向うの摩利信乃法師が、たちまち身を起したらしいけはいを見せて、

「誰じゃ。」と、一声咎めました。もうこうなっては、甥を始め、私までも騎虎の勢いで、どうしてもあの沙門を、殺すよりほかはございません。そこでその声がするや否や、前と後と一斉に、ものも云わずに白刃をかざして、いきなり小屋の中へつきこみました。その白刃の触れ合う音、竹の柱の折れる音、蓆壁の裂け飛ぶ音、――そう云う物音が凄じく、一度に致したと思いますと、矢庭に甥が、二足三足後の方へ飛びすさって、「おのれ、逃がしてたまろうか。」と、太刀をまっこうにふりかざしながら、苦しそうな声でおめきました。その声に驚いて私も素早く跳ねのきながら、まだ燃えている芥火の光にきっと向うを透かして見ますと、まあ、どうでございましょう。