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とかいのなかのことう

都会の中の孤島

坂口 安吾

「小説新潮 第七巻第四号」1953(昭和28)年3月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,205 字 · 27 页

青空文庫

「知らないよ。アイツは恩知らずよ。私が学校を卒業させてやったのにね。私の物をみんな売りとばして、おまけに、恋人つくってさ。だけど、考えてみると、私ゃ、中井に惚れてなかったわね」

「虎の子全部貢いでるんだから惚れてるにきまってらアな」

「ウソだよ。そんなことをしてみたかっただけらしいよ。私ゃ、平気だもの。これからだって、そんなこと、やろうと思えば、なんべんでも、できるよ。私ゃ、中井なんかに復讐したいと思わないよ」

「グズ弁を助けたいとも思わないのか」

「思わないわね。だいたい、あんた、世の中なんて、いい加減でいいのよ。一々キチンキチンやられちゃ、やりきれないわよ。私はね、誰かが下の夫婦を殺しゃいいのに、とバクゼンと思っていたわね。だいたい誰が誰を殺したってかまうこたアありゃしないよ。なんでも商売さ。人殺しの商売もあるし、人殺しをつかまえる商売もあるし、それがあんた、ちがった犯人をつかまえたって、男が入れ代ってるだけじゃないか、そんなこと云ってたら、パンパンなんか、してられるもんか。戦争も、そんなものだわよ。みんな、いい加減だから、それで世の中がまるくいくのさ。