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さけぎらい

酒ぎらい

太宰 治

「知性 第三巻第三号」1940(昭和15)年3月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,899 字 · 12 页

青空文庫

そのうちに、新聞の帯封に差出人の名前を記して送ってくるようになった。Wである。私の知らぬお名前であった。私は、幾度となく首ふって考えたが、わからなかった。そのうちに、「金木町のW」と帯封に書いてよこすようになった。金木町というのは、私の生れた町である。津軽平野のまんなかの、小さい町である。同じ町の生れゆえ、それで自社の新聞を送って下さったのだ、ということは、判明するに到ったが、やはり、どんなお人であるか、それを思い出すことができないのである。とにかく御好意のほどは、わかったのであるから、私は、すぐにお礼をハガキに書いて出した。「私は、十年も故郷へ帰らず、また、いまは肉親たちと音信さえ不通の有様なので、金木町のW様を、思い出すことが、できず、残念に存じて居ります。どなたさまで、ございましたでしょうか。おついでの折は、汚い家ですが、お立ち寄り下さい。」というようなことを書きしたためた筈である。相手の人の、おとしの程もわからず、或いは故郷の大先輩かも知れぬのだから、失礼に当らぬよう、言葉使いにも充分に注意した筈である。折返し長いお手紙を、いただいた。それで、わかった。