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さけぎらい

酒ぎらい

太宰 治

「知性 第三巻第三号」1940(昭和15)年3月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,899 字 · 12 页

青空文庫

二日つづけて酒を呑んだのである。おとといの晩と、きのうと、二日つづけて酒を呑んで、けさは仕事しなければならぬので早く起きて、台所へ顔を洗いに行き、ふと見ると、一升瓶が四本からになっている。二日で四升呑んだわけである。勿論、私ひとりで四升呑みほしたわけでは無い。おとといの晩はめずらしいお客が三人、この三鷹の陋屋にやって来ることになっていたので、私は、その二三日まえからそわそわして落ちつかなかった。一人は、W君といって、初対面の人である。いやいや、初対面では無い。お互い、十歳のころに一度、顔を見合せて、話もせず、それっきり二十年間、わかれていたのである。一つきほどまえから、私のところへ、ちょいちょい日刊工業新聞という、私などとは、とても縁の遠い新聞が送られて来て、私は、ちょっとひらいてみるのであるが、一向に読むところが無い。なぜ私に送って下さるのか、その真意を解しかねた。下劣な私は、これを押売りではないかとさえ疑った。家内にも言いきかせ、とにかく之は怪しいから、そっくり帯封も破らずそのままにして保存して置くよう、あとで代金を請求して来たら、ひとまとめにして返却するよう、手筈をきめて置いたのである。