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さかやのワンこう
酒屋のワン公
小川 未明
「童話文学」1928(昭和3)年7月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 3,017 字 · 6 页
酒屋へきた小僧は、どこかの孤児院からきたのだということでした。それを見ても、彼には、頼るものがなかったのです。
ものをいうのにも、人の顔をじっと見ました。その目つきはやさしそうに見えたけれど、なんとなく、不安な影が宿っていました。
「もしや、自分のいったことが、相手の心を傷めて、しかられるようなことはないかしらん?」と、思ったがためです。
世間の心ある親たちは、そのようすをながめたときに、「親のない子は、かわいそうなものだ。」といいました。
彼は、十二、三になりましたが、年のわりあいに脊が低かった。そればかりでなく、歩く時分、二本の短い足が内輪に曲がっているから、ちょうどブルドッグの歩くときのような姿を想像させたのでした。そのことから、いつしかだれいうとなく、「酒屋のワン公」と、呼ぶようになりました。そして、この哀れな少年の本名すら知るものがありません。彼は、ついに、いつもこのあだ名で、ワン公、ワン公と呼ばれていたのです。
この少年の足は、生まれながらにして、こんなふうに、曲がっていたのではなかったのでした。不幸な境遇は、やっと、六つか七つぐらいになった時分から、赤ん坊をおぶわせられて、守りをしたからです。